達成追求:野心を駆り立てるものは何か、そしていつ行きすぎになるのか?
常に上を目指す人もいれば、「そこそこ」で満足する人もいます。野心、グリット、ワーカホリズムに関する研究と、このファセットの測り方を紹介します。
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二人の学生が同じ課題を出されました。一人は課題を読んで、合格するのに何が必要かを見きわめ、その週の残りを友人と過ごします。
もう一人は参考文献を余分に読み、序論を4回書き直し、求められたものをはるかに超える内容を提出します。誰かに求められたからではなく、「そこそこ」ではどうしても満足できないからです。
たいていの人は、どちらのタイプの人も知っているでしょう。もしかすると、どちらかに自分を重ねるかもしれません。
この意欲はどこから来るのでしょうか。それは報われるのでしょうか。そして野心は、いつ自分をすり減らすものに変わってしまうのでしょうか。
心理学者はこの傾向を達成追求と呼びます。ビッグファイブ・モデルでは、達成追求は誠実性の六つのファセットのひとつです。このファセットは、目標に向かってどれだけ懸命に努力するか、そして自分にどれだけ高いハードルを課すかを表します。
達成追求とはどういう意味か
達成追求とは、意欲と野心のこと、つまりうまくやりたい、目標を達成したい、期待以上の成果を出したいという気持ちです。
スコアが高い人は、次のような点に思い当たることが多いでしょう。
- 懸命に働き、必要以上に頑張ることも多い。
- 自分に高い目標を課す。
- なんとかなる程度にしかやらないのは物足りない。
- 人生の方向性がはっきりしていることが多い。
- 何かが終わっていないと、なかなかくつろげない。
達成追求は、他人と競い合うこととは違います。他人に勝つことにはあまり関心がなくても、自分のためにとても野心的でいることはできます。
大切なのはどれだけ多くを成し遂げるかではなく、ベストを尽くそうとどれだけ強く駆り立てられているかです。野心は報われるのか:70年分のデータ
野心に関する最も印象的な研究のひとつは、心理学者ルイス・ターマン(Lewis Terman)が1920年代に始めたプロジェクトのデータを用いたものです。ターマンは、特に才能に恵まれた子どもたちのグループを生涯にわたって追跡しました。
2012年、二人の研究者がこのデータを使い、そのうち717人を70年にわたって調べました。野心がどこから生まれ、何につながるのかを知りたかったのです。
野心は、誠実性、外向性、神経症傾向、知能、そして親がより社会的地位の高い職業についていることによって予測されました。そして野心的な人は、より高い学歴、より地位の高い職業、より高い収入を得ていました。ただし、野心は寿命には影響していませんでした。
この研究の参加者は全員が非常に優秀だったことを覚えておいてください。だからこそ、この結果はいっそう興味深いものになっています。同じように高い才能を持つ人の間でも、野心が違いを生んでいたのです。
グリットは誠実性の新しい呼び名にすぎないのか
2007年、心理学者アンジェラ・ダックワース(Angela Duckworth)らは、グリット(長期的な目標に対する粘り強さと情熱)という概念を打ち出しました。この考え方は学校や職場ですぐに広まりました。
最初の研究では、グリットはさまざまな場面での成功を予測していました。大人の学歴、名門大学の学生の成績、ウェストポイント陸軍士官学校でどの士官候補生が辞めずに残ったか、全米スペリング大会で子どもがどこまで勝ち進んだか、などです。グリットは IQ の高さとは関連していませんでしたが、誠実性とは強く関連していました。
10年後、およそ6万7,000人を含む88のサンプルをまとめた大規模なメタ分析が行われました。結論はもっと冷静なものでした。グリットとパフォーマンスの関連は中程度にとどまり、誠実性との相関があまりに強いため、本当に新しいものなのかどうかがはっきりしなかったのです。
グリットのうち最も役に立ったのは粘り強さと努力に関する部分で、これは達成追求や自己規律が測っているものにとても近いものです。著者らはまた、グリットを高めるプログラムがパフォーマンスに与える効果は弱いかもしれないと警告しました。
教訓は、粘り強さが大切でないということではありません。昔からよく測定されてきた誠実性という特性が、グリットを有望に見せていたものの多くをすでにとらえている、ということです。
達成追求はワーカホリズムとは違う
懸命に働くことと、仕事中毒であることは別のことです。
2016年のメタ分析は、ワーカホリズムが何と関連しているかを調べました。ワーカホリズムは、完璧主義や、せっかちで常に時間に追われている感覚を特徴とする、いわゆるタイプAの性格と関連していました。しかし、誠実性とは概して関連していませんでした。
同時に、ワーカホリズムは多くの悪い結果と結びついていました。燃え尽き、仕事のストレス、仕事と私生活の葛藤、心身の健康の悪化です。研究者は、ワーカホリズムは仕事への依存症として理解するのが最も適切だと結論づけました。
言い換えれば、達成追求のスコアが高いからといって、ワーカホリックだというわけではありません。達成追求は目標に向かう意欲についてのものです。ワーカホリズムは、自分を傷つけていても止められないことについてのものです。
達成追求は自己規律とも区別するべきです。達成追求は、どれだけ多くのことを成し遂げたいかについてのものです。自己規律は、計画したことに実際に取りかかり、やり遂げられるかどうかについてのものです。とても野心的なのに、先延ばしに悩んでいる人はたくさんいます。
スコアが高い・低いとはどういうことか
達成追求が高い
意欲的で目標志向であり、多くの努力をいとわない人です。それは教育や仕事でよく報われ、周りの人はあなたを結果を出す人だと見ています。
裏を返せば、なかなか満足できなかったり、負担になるほどハードルを高くしてしまったり、仕事のせいで休息や人間関係が押しのけられたりするかもしれません。「そこそこ」で実際に十分なのはどんなときかを意識しておくと、自分を守ることができます。
達成追求が低い
抜きん出たいという強い欲求は感じておらず、必要なことをやれば満足です。そのぶん、余暇や人間関係など、自分にとって大切なほかのことにゆとりを持てます。
スコアが低いからといって、怠け者だとか能力が足りないという意味ではありません。スコアの低い人の多くは、単に成果以外のところにエネルギーを注いでいるのです。リスクは、周りから過小評価されたり、余分な努力が必要なチャンスを逃したりすることです。
どちらの説明も典型的な傾向を述べたもので、どんな場面にも当てはまる法則ではありません。
日常生活では
- 職場で:スコアの高い人は余分な責任を引き受けることが多く、昇進も早い傾向がありますが、働きすぎのリスクもあります。スコアの低い人は、自分の自由な時間をうまく守っていることが多いです。
- 学校で:達成追求があると、試験前に余分な時間を勉強に費やしやすくなります。その時間を実際にうまく使えるかどうかは、自己規律にかかっています。
- 恋愛・パートナー関係で:たとえば一方が毎晩仕事をしていて、もう一方は二人の時間をもっと持ちたいと思っている場合など、野心の違いは摩擦を生むことがあります。
- 余暇で:スコアの高い人は、趣味を目標とトレーニング計画のあるプロジェクトにしてしまうことがよくあります。スコアの低い人は、純粋に楽しみのために何かをすることが多いでしょう。
達成追求は変わるのか
性格はかなり安定していますが、固定されてはいません。2015年の研究で、研究者は人々を16週間追跡しました。ビッグファイブの特定の特性を高めたいと思っていた人は、自己評価でも日々の行動でも、その方向に変化する傾向がありました。
研究者が試した方法のうち、特にうまくいったものがあります。「もし5時前に帰宅したら、そのプロジェクトに30分取り組む」のような、具体的な「もし〜なら〜する」という計画(if-thenプランニング)を立てる練習です。
もっと意欲的になりたいなら、自分にとって本当に意味のある目標を選び、それを具体的なステップに分けると役に立つことが多いでしょう。スコアがとても高く、それで消耗していると感じるなら、取り組むべきことはむしろ逆かもしれません。限度を設け、休息を優先し、すべてが完璧である必要はないと受け入れることです。
仕事が生活を埋め尽くし、疲労困憊や睡眠の問題、気分の落ち込みを感じているなら、医師や心理士に相談してみる価値があるかもしれません。ビッグファイブのスコアは診断ではありません。
よくある質問
達成追求が高いのは、完璧主義と同じ?
いいえ。達成追求は、目標に向かって懸命に努力することについてのものです。完璧主義には、欠点のなさを求め、うまくいかなかったときに自分を厳しく責めることが含まれます。この二つが一緒に見られることもありますが、野心的な人の多くは完璧主義者ではありません。
スコアが低いのは、怠け者だということ?
いいえ。このファセットが測っているのは、抜きん出ようとどれだけ強く駆り立てられているかであって、あなたの価値や能力ではありません。スコアの低い人の多くは、着実にしっかり仕事をしていますが、求められた以上のことをする必要は感じていないのです。
野心があると幸せになれる?
上で紹介した研究は、野心が学歴、職業的地位、収入と結びついていることを示しています。それが自動的により良い人生を意味するわけではありません。たとえばワーカホリズムは、健康の悪化や、仕事と私生活の葛藤の増加と結びついています。
ビッグファイブ性格診断では達成追求をどう測っているのか?
このテストは IPIP-NEO-120 にもとづいており、各ファセットを四つの文で測定します。達成追求については、「よく働く」「求められていること以上のことをする」「必要最低限のことしかやらない」、そして仕事に時間と労力を割きたくない、という内容です。スコアは、あなたのすべてを表すものではなく、傾向のサインとして読んでください。
自分のスコアを確かめよう
達成追求は誠実性の六つのファセットのひとつにすぎません。とても野心的でも、秩序性や慎重さのスコアは低いということもあります。
ビッグファイブ性格診断を受けて、30のファセットすべてを含む自分のプロフィール全体を確かめてみましょう。
参考文献
- Judge, T. A. & Kammeyer-Mueller, J. D. (2012). On the value of aiming high: The causes and consequences of ambition. Journal of Applied Psychology, 97(4), 758–775.
- Duckworth, A. L., Peterson, C., Matthews, M. D. & Kelly, D. R. (2007). Grit: Perseverance and passion for long-term goals. Journal of Personality and Social Psychology, 92(6), 1087–1101.
- Credé, M., Tynan, M. C. & Harms, P. D. (2017). Much ado about grit: A meta-analytic synthesis of the grit literature. Journal of Personality and Social Psychology, 113(3), 492–511.
- Clark, M. A., Michel, J. S., Zhdanova, L., Pui, S. Y. & Baltes, B. B. (2016). All work and no play? A meta-analytic examination of the correlates and outcomes of workaholism. Journal of Management, 42(7), 1836–1873.
- Hudson, N. W. & Fraley, R. C. (2015). Volitional personality trait change: Can people choose to change their personality traits? Journal of Personality and Social Psychology, 109(3), 490–507.
- Johnson, J. A. (2014). Measuring thirty facets of the Five Factor Model with a 120-item public domain inventory: Development of the IPIP-NEO-120. Journal of Research in Personality, 51, 78–89.
