自己規律:私たちはなぜ先延ばしにしてしまうのか?
やるべきだとわかっていることを、なぜ後回しにしてしまうのでしょうか。先延ばし、習慣、意志の力に関する研究と、ビッグファイブでの自己規律の測り方を紹介します。
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締め切りは金曜日です。月曜日には、まだ時間はたっぷりあると思います。火曜日には、何週間も手をつけていなかった台所の掃除をします。水曜日には「ちょっとだけ」とスマホを見て、気づけば1時間たっています。
木曜日の夜、焦りながら机に向かい、1週間かけて落ち着いてできたはずのことを4時間でこなします。
こうなることはわかっていました。おそらく前にも同じことをしたはずです。では、やるべきだとわかっていることを、なぜ私たちは後回しにし続けるのでしょうか。
その答えの一部は、心理学者が自己規律と呼ぶものにあります。ビッグファイブ・モデルでは、自己規律は誠実性の六つのファセットのひとつです。このファセットは、退屈だったり気が進まなかったりする課題でも、どれだけうまく取りかかり、最後までやり遂げられるかを表します。
自己規律とはどういう意味か
自己規律とは、多くの人が「意志の力」と呼ぶもの、つまり気が散ることや気乗りしないことに振り回されずに、課題に取りかかり、終わるまで続ける力のことです。
スコアが高い人は、次のような点に思い当たることが多いでしょう。
- あまりぐずぐずせずに課題に取りかかる。
- 立てた計画を実行する。
- いざというときには、たいてい準備ができている。
- 1日を無駄にしたと感じることはめったにない。
- 退屈な作業でも、終わるまで続けられる。
自己規律は、どれだけ多くのことを成し遂げたいかについてのものではありません。大きな野心を持ちながらなかなか取りかかれない人も多く、大きな野心はなくても着実に落ち着いて課題をこなす人も多いのです。
大切なのは何かをどれだけ強く望んでいるかではなく、意図から行動へどれだけすんなり移れるかです。先延ばし:自己コントロールの典型的な失敗
2007年、心理学者 Piers Steel は、先延ばしに関する研究の大規模なレビューを発表しました。過去の研究から691の相関をまとめ、何が実際に先延ばしを予測するのかを明らかにしようとしたのです。
最も強い予測因子のいくつかは、課題に関するものでした。私たちは、不快に感じる課題や、報酬がずっと先にある課題を後回しにします。ほかの予測因子は人に関するもので、自己効力感の低さ、衝動性、そして自己コントロール、気の散りやすさ、整理整頓、達成への動機づけに関する部分を含む、誠実性の低さでした。
興味深いことに、神経症傾向、反抗心、刺激を求める傾向との関連は弱いものでした。つまり先延ばしは、主に不安や反抗の問題ではなく、今は不快だが後で報われる課題にどう向き合うかの問題なのです。
Steel はこれを、自ら「時間的動機づけ理論」と呼ぶもので説明しました。私たちは報酬が遠くにあるほど、その価値を低く見積もります。今日ソファでくつろぐ夜は、3週間後の良い成績にやすやすと勝ってしまうのです。
先延ばしは気持ちがいい、ただし最初だけ
先延ばしがそんなに有害なら、なぜ私たちはそれをしてしまうのでしょうか。短期的にはうまくいくからです。
1997年の二つの研究で、研究者は学生を1学期にわたって追跡しました。学期の初め、先延ばしをする学生は、ほかの学生よりもストレスや体調不良が少ないと報告していました。学期の終わりが近づくとパターンは逆転し、ストレスも体調不良も多くなっていました。学期全体で見ると、彼らのほうが体調を崩していたのです。また、すべての課題で成績も低くなっていました。
心理学者の Fuschia Sirois と Timothy Pychyl は、先延ばしは基本的に気分の問題だと主張しています。ある課題のせいで退屈や不安、自信のなさを感じると、それを後回しにすることは、手っ取り早く気分を良くする方法になります。そのつけは未来の自分に回され、未来の自分は課題と時間的なプレッシャーの両方に対処しなければならなくなります。
この見方は、先延ばしの理解の仕方を変えてくれます。先延ばしは必ずしも怠けのしるしではなく、今この瞬間の不快な感情をなんとかしようとする試みのしるしなのです。
自己規律のある人の秘訣:習慣
自己規律のある人は、一日中ひたすら意志の力で誘惑に抵抗しているのだと私たちは想像しがちです。しかし研究からは、違う姿が浮かび上がります。
合計2,274人を対象とした2015年の六つの研究では、自己コントロールに優れた人は、日常生活で努力して抵抗することがむしろ少ないことがわかりました。その理由は、睡眠、運動、健康的な間食、学業について、良い習慣を身につけていたからです。彼らの行動は、より自動的になっていました。
自己コントロールが成績の高さや大学を中退しないことなど良い結果と結びついていた理由の一部は、こうした習慣で説明できました。
言い換えれば、自己規律のある人は、その場その場で必ずしも強いわけではありません。闘わずにすむように、生活を整えているのです。
自己規律は誘惑に抵抗することとは違う
自己規律は、神経症傾向のファセットである不節制と混同されやすいものです。
不節制とは、食べすぎや買い物、後悔するようなことなど、欲求や衝動に抵抗するのがどれだけ難しいかについてのものです。欲しいものに負けないことに関わります。
自己規律はその逆方向、つまり、あまりやりたくないことを自分にさせることについてのものです。ケーキの誘惑には強いのに、確定申告は何週間も後回しにする、ということもありえます。
自己規律は達成追求とも区別するべきです。達成追求は、どれだけ高いところを目指すかについてのものです。自己規律は、実際に取りかかれるかどうかについてのものです。
自己規律の低さは、ADHD とも違います。取りかかることや集中し続けることの難しさは ADHD によく見られますが、先延ばしをする人のほとんどは ADHD ではありません。ビッグファイブのスコアを診断に使うことはできません。注意力や物事をやり遂げることの問題で、学校や職場、家庭で大きな支障が出ているなら、医師や心理士が評価してくれます。
スコアが高い・低いとはどういうことか
自己規律が高い
物事をやり遂げる人で、たいていは大騒ぎせずにそうします。そのため仕事や勉強で頼りにされ、ぎりぎりの作業にともなうストレスもおそらく少ないでしょう。
裏を返せば、課題を手放してくつろぐのが苦手だったり、やめるべきだったことまで押し通してしまったりするかもしれません。すべての課題が、最後までやり遂げる価値があるわけではありません。
自己規律が低い
特に退屈な課題では取りかかるのに苦労することが多く、時間がいつの間にか過ぎていくと感じるかもしれません。スコアの低い人の多くはプレッシャーがかかったときに力を発揮し、締め切りが迫るとたくさんの成果を出せます。
スコアが低いからといって、能力や意欲が足りないわけではありません。主に、意図から行動までの距離があなたにとっては長く、外からの仕組みをもっと取り入れると役に立つかもしれない、ということです。
どちらの説明も典型的な傾向を述べたもので、どんな場面にも当てはまる法則ではありません。
日常生活では
- 職場で:在宅勤務や自営業など、自由度が高く監督の少ない仕事では、自己規律が特に重要になります。
- 勉強で:1997年の研究が示したように、早く始める人と遅く始める人の差は、成績に表れることが多いです。
- 健康面で:運動、睡眠、食事はどれも、後の報酬のために今何かをすることです。決意よりも習慣のほうが役に立つことが多いでしょう。
- 家庭で:請求書、書類、予約は、先延ばしの典型的な対象です。自動化できるものを自動化すれば、問題の多くはなくなります。
自己規律は変わるのか
性格はかなり安定していますが、固定されてはいません。2015年の研究で、研究者は人々を16週間追跡しました。ビッグファイブの特定の特性を高めたいと思っていた人は、その方向に変化する傾向がありました。特にうまくいった方法は、具体的な「もし〜なら〜する」という計画(if-thenプランニング)を立てることでした。
先延ばしと習慣に関する研究からは、いくつかの具体的な戦略が見えてきます。
- 始めの一歩を小さくする:「報告書を書く」より「10分だけ書く」のほうが取りかかりやすくなります。
- if-thenで計画する:「コーヒーを飲み終えたら、ファイルを開く」。
- 意志の力に頼らず、習慣をつくる:決まった時間と場所で行うと、課題はより自動的になります。
- 誘惑を取り除く:スマホに抵抗しようとするより、別の部屋に置く。
- 課題だけでなく、気持ちにも働きかける:先延ばしは嫌な気持ちから逃げることである場合が多いので、誰かと一緒にやる、終わったら自分にごほうびをあげるなど、課題を不快に感じにくくする工夫が役に立ちます。
よくある質問
意志の力は、使うと減っていく資源なのか?
自己コントロールは使うと疲れる筋肉のようなものだという考え方は、「自我消耗」とも呼ばれ、長年とても人気がありました。2016年、23の研究室が合計2,141人を対象に同じ実験を行い、これを検証しました。見いだされた効果はほぼゼロでした。そのため、この理論は長い間考えられていたよりもずっと不確かなものになっています。
先延ばしは怠けと同じ?
いいえ。怠けている人は、その課題をそれほどやりたいと思っていません。先延ばしをする人は、やりたいと思っていることが多く、取りかかれない自分を責めています。研究によれば、先延ばしは主に不快な感情を避けることに関わっています。
自己規律がありすぎることはある?
あります。まったくくつろげなかったり、やめるべきだったことを続けてしまったりする場合です。柔軟性もまた大切なスキルです。
ビッグファイブ性格診断では自己規律をどう測っているのか?
このテストは IPIP-NEO-120 にもとづいており、各ファセットを四つの文で測定します。自己規律については、「常に準備ができている」「計画は実行する」「時間を効率よく使わない」「仕事を始めるのが難しい」という内容です。スコアは、あなたのすべてを表すものではなく、傾向のサインとして読んでください。
自分のスコアを確かめよう
自己規律は誠実性の六つのファセットのひとつにすぎません。自己規律が低くても、義務感や達成追求のスコアは高いということもあります。
ビッグファイブ性格診断を受けて、30のファセットすべてを含む自分のプロフィール全体を確かめてみましょう。
参考文献
- Steel, P. (2007). The nature of procrastination: A meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure. Psychological Bulletin, 133(1), 65–94.
- Tice, D. M. & Baumeister, R. F. (1997). Longitudinal study of procrastination, performance, stress, and health: The costs and benefits of dawdling. Psychological Science, 8(6), 454–458.
- Sirois, F. M. & Pychyl, T. A. (2013). Procrastination and the priority of short-term mood regulation: Consequences for future self. Social and Personality Psychology Compass, 7(2), 115–127.
- Galla, B. M. & Duckworth, A. L. (2015). More than resisting temptation: Beneficial habits mediate the relationship between self-control and positive life outcomes. Journal of Personality and Social Psychology, 109(3), 508–525.
- Hagger, M. S., Chatzisarantis, N. L. D. et al. (2016). A multilab preregistered replication of the ego-depletion effect. Perspectives on Psychological Science, 11(4), 546–573.
- Hudson, N. W. & Fraley, R. C. (2015). Volitional personality trait change: Can people choose to change their personality traits? Journal of Personality and Social Psychology, 109(3), 490–507.
- Johnson, J. A. (2014). Measuring thirty facets of the Five Factor Model with a 120-item public domain inventory: Development of the IPIP-NEO-120. Journal of Research in Personality, 51, 78–89.
