協力性:何としてでも対立を避けようとする人がいるのはなぜか?
何としてでも対立を避ける人もいれば、言い争いを楽しむ人もいます。協調性と対立に関する研究と、ビッグファイブでの協力性の測り方を紹介します。
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家族での食事中、誰かが政治について一言口にしました。ある人はすぐに話題を変えます。別の人は、意見は違っても聞き流します。三人目は身を乗り出し、議論を明らかに楽しみにしています。
口げんかになるくらいなら、イライラをぐっと飲み込むほうがいいという人もいます。一方で、しっかり言い合えば空気がすっきりすると感じる人もいます。
なぜ私たちは、対立に対してこれほど違う反応をするのでしょうか。
その答えの一部は、ビッグファイブで協力性と呼ばれるものにあります。協力性は協調性の六つのファセットのひとつで、どれだけ強く対決を避けるか、そして誰かと意見が合わないときに、怒鳴ったり、けなしたり、仕返ししたりすることがどれだけ少ないかを表します。
協力性とはどういう意味か
名前からはチームワークの話のように聞こえるかもしれません。ビッグファイブでのこのファセットは、主に意見の対立や他人への怒りにどう対処するかに関するものです。もともとの NEO モデルでは「応諾(compliance)」と呼ばれています。
スコアが高い人は、次のような点に思い当たることが多いでしょう。
- 口げんかが嫌いで、その場を落ち着かせようとする。
- 怒っていても、声を荒らげたり誰かをけなしたりすることはめったにない。
- 仕返しするより、水に流す。
- 自分の希望を犠牲にしてでも、歩み寄ろうとすることがある。
スコアが低い人は、対決することにそれほど抵抗がありません。白熱した議論を楽しみ、思っていることをはっきり言い、自分の思いどおりにしようと押し切ることもあります。
大切なのは怒るかどうかではなく、誰かと対立したときにその怒りをどう扱うかです。誰もが交渉を好む、ただし程度は違う
William Graziano らは、263人の学生に、5種類の人間関係における対立の解決方法をいろいろ評価してもらいました。
協調性のスコアが高い人も低い人も、脅しや圧力のような力ずくの戦術より、交渉や身を引くことのほうが良い選択だという点では一致していました。ただし協調性の低い人は、高い人に比べて、力ずくの戦術をより良い選択肢だと評価しました。
二つ目の研究では、対立のある問題を一緒に解決しなければならないペアを撮影しました。協調性は、性別や相手が誰かという要素とともに、対立の展開と関連していました。
協調性は日常の対立を形づくる
Lauri Jensen-Campbell と William Graziano は、若者たちに日常生活での実際の対立について2週間日記をつけてもらい、その様子を追いました。
ビッグファイブの特性のうち、人が対立にどう反応するかと最も密接に関連していたのは協調性でした。対立の場面で破壊的な戦術を使う人は、その人をよく知る教師から、適応が良くないと評価されていました。
その後の小学生を対象とした研究でも、同じパターンが見られました。観察者によれば、協調性の高い子ども同士のペアは、より穏やかで建設的な形で対立していました。
攻撃への回路を断ち切る
挑発されても手を出さない人がいるのはなぜでしょうか。
Brian Meier、Michael Robinson、Benjamin Wilkowski は、参加者に攻撃性に関連する手がかりを示しました。暴力的なメディアなど、そうした手がかりは敵意のある考えと攻撃的な行動の両方を強めることがあります。
この研究でもそれは起こりましたが、協調性の低い人に限られていました。二つ目の研究では、攻撃性に関連する手がかりは、最も協調性の高い参加者の間ではかえって向社会的な考えを呼び起こしました。
研究者たちは、協調性の高い人は自動的に友好的な考えに手を伸ばすことで、挑発から攻撃へと向かう経路を「ショートさせる」のかもしれないと考えました。この研究が測ったのは協調性全体であって、協力性ファセットそのものではありませんが、このファセットによく合う仕組みを示しています。
いい人は損をするのか
対立を避ける人は職場で損をする、とよく思われています。
Timothy Judge、Beth Livingston、Charlice Hurst は、四つの研究を通じて、協調性の高い人ほど収入が低く、その関連は女性より男性でよりマイナスだったことを見いだしました。測定されたのは協調性全体で、協力性ファセットではありません。ある実験からは、協調性の高い男性は、男性は「こうふるまうべきだ」という期待から外れるために反発を受けるのかもしれないことが示唆されました。
とはいえ、協調性が低いことが権力への近道というわけでもありません。以前紹介した長期研究では、協調性の低い人がほかの人より組織内で出世したわけではありませんでした。詳しくは協調性の低い人は職場で権力を得やすいのか?をお読みください。
協力性は怒りの少なさとは違う
協力性は、神経症傾向のファセットである怒りと混同されやすいものです。
怒りは、イライラや激しい怒りをどれだけ感じやすいかについてのものです。協力性は、それをどう行動に移すかについてのものです。すぐに腹が立っても、ぐっと言葉を飲み込む人もいます。逆に、めったに怒りを感じないのに、自分にとって大事なことになると冷たく対決的になる人もいます。
協力性は、自己主張とも違います。自己主張とは、主導権を握り、はっきり意見を言うことです。怒鳴ったりけなしたりせずに、しっかりと自分の立場を守ることはできます。自己主張と協力性の両方が高い人の多くは、攻撃せずに思っていることを言えるからこそ、対立をうまく扱えるのです。
スコアが高い・低いとはどういうことか
協力性が高い
対立を避け、その場を落ち着かせるのが得意です。周りの人はあなたと一緒に働いたり暮らしたりするのを心地よく感じ、あなたが余計なもめごとを起こすことはめったにありません。
リスクは、向き合うべき対立まで避けてしまい、飲み込みすぎて、ほかの人に決めさせてしまうことです。口にされない不一致は、時間とともに大きくなることがあります。
協力性が低い
対決することに抵抗がなく、思っていることを言います。何かに異を唱える必要があるときや、自分の立場を主張しなければならない交渉では、これが役に立ちます。
リスクは、対立が必要以上にエスカレートし、人間関係が損なわれることです。Graziano の研究では、協調性の低い人でさえ、力ずくの戦術より交渉のほうが良い選択だと評価していました。
どちらの説明も典型的な傾向を述べたもので、どんな場面にも当てはまる法則ではありません。
日常生活では
- 職場で:スコアの高い人は良い職場環境をつくりますが、問題を早めに切り出す練習が必要かもしれません。スコアの低い人は重要な変化を推し進められますが、自分が周りにどう受け取られているかに気を配るべきでしょう。
- 恋愛・パートナー関係で:二人とも対立を避けるカップルは、口にされない問題をたくさん抱えてしまうことがあります。二人とも対決的なカップルは、よくけんかをするかもしれません。多くの場合、大切なのは対立が起こるかどうかではなく、どう解決されるかです。
- 家族の中で:スコアの高い人は仲裁役になることが多いです。それは価値のあることですが、いつも平和を保つ責任を背負っているなら、疲れてしまうこともあります。
- ネットで:コメント欄は対決を助長しがちです。スコアの低い人は言い争いに引き込まれやすく、スコアの高い人は距離を置くことが多いでしょう。
協力性は変わるのか
性格はかなり安定していますが、対立の扱い方は学ぶことができます。Brent Roberts らによる92のサンプルの大規模なメタ分析では、協調性の平均的なレベルが変化したのは高齢期だけでした。ですから、数年のうちに自然と変わることは期待しないほうがよいでしょう。
良いニュースは、対立のときのふるまいは特性であるだけでなく、スキルでもあるということです。スコアに関係なく役に立つことをいくつか挙げます。
- 問題と人を分ける。その人が何者かではなく、何をしたかを批判する。
- 後悔するようなことを言いそうだと気づいたら、いったん休憩をとる。
- 対立を避けがちなら、小さな意見の違いを大きくなる前に早めに口にする練習をする。
- 対決的になりがちなら、議論に勝つことが、関係に生じる代償に見合うかを自問する。
よくある質問
対立を避けるのは不健全?
必ずしもそうではありません。多くの対立は、わざわざ向き合う価値がないものです。ただし、自分にとって大事なことをいつも飲み込んでいると、不満がたまっていくことがあります。目標はすべての対立を避けることではなく、向き合う対立を選ぶことです。
協力性が低いのは、攻撃的だということ?
いいえ。スコアの低い人は対決することをいとわず、引き下がることが少ないのですが、それは暴力や攻撃性の問題とは違います。怒りのせいで後悔するような状況になってしまうなら、医師や心理士に相談するのも役に立つでしょう。
優しくて、しかも率直でいられる?
いられます。率直さとは思っていることを言うことで、協力性の低さとは攻撃したり、けなしたり、仕返ししたりすることです。はっきり伝えながらも、相手を尊重することはできます。
ビッグファイブ性格診断では協力性をどう測っているのか?
このテストは IPIP-NEO-120 にもとづいており、各ファセットを四つの文で測定します。協力性については、四つすべてが逆方向の項目です。「喧嘩好きである」「人に大声を出す」「人をけなす」「人に仕返しをする」という内容です。スコアは、あなたのすべてを表すものではなく、傾向のサインとして読んでください。
自分のスコアを確かめよう
協力性は協調性の六つのファセットのひとつにすぎません。対立を避ける人でも、信頼や利他性のスコアは低いということもあります。
ビッグファイブ性格診断を受けて、30のファセットすべてを含む自分のプロフィール全体を確かめてみましょう。
参考文献
- Graziano, W. G., Jensen-Campbell, L. A. & Hair, E. C. (1996). Perceiving interpersonal conflict and reacting to it: The case for agreeableness. Journal of Personality and Social Psychology, 70(4), 820–835.
- Jensen-Campbell, L. A. & Graziano, W. G. (2001). Agreeableness as a moderator of interpersonal conflict. Journal of Personality, 69(2), 323–362.
- Jensen-Campbell, L. A., Gleason, K. A., Adams, R. & Malcolm, K. T. (2003). Interpersonal conflict, agreeableness, and personality development. Journal of Personality, 71(6), 1059–1086.
- Meier, B. P., Robinson, M. D. & Wilkowski, B. M. (2006). Turning the other cheek: Agreeableness and the regulation of aggression-related primes. Psychological Science, 17(2), 136–142.
- Judge, T. A., Livingston, B. A. & Hurst, C. (2012). Do nice guys—and gals—really finish last? The joint effects of sex and agreeableness on income. Journal of Personality and Social Psychology, 102(2), 390–407.
- Roberts, B. W., Walton, K. E. & Viechtbauer, W. (2006). Patterns of mean-level change in personality traits across the life course: A meta-analysis of longitudinal studies. Psychological Bulletin, 132(1), 1–25.
- Johnson, J. A. (2014). Measuring thirty facets of the Five Factor Model with a 120-item public domain inventory: Development of the IPIP-NEO-120. Journal of Research in Personality, 51, 78–89.

